建物所有者と宅地所有者が異なる場合

建物所有者と宅地所有者が異なる場合

特例の対象となり得る宅地等は被相続人が所有していることが必要です。ただし、その宅地の上にある建物等について被相続人の所有であることまで求められていません。建物は被相続人以外の者が所有していても構わないのです。このため、①建物等の所有者が誰であるか、②宅地や建物所有者と利用者の間の地代及び家賃の授受関係(無償又は有償のどちらか)によって、特例適用の可否及び適用できる小規模宅地等の種類が異なってきます。

特定居住用宅地等の場合

建物等の所有者が被相続人以外の者である場合には、地代と家賃の両方が無償の場合(使用貸借を含む)に限られます(措通69の4-7)。どちらかが有償の場合は貸付事業用宅地等の適用可否を検討します。

特定居住用宅地:宅地所有者と建物所有者が異なる場合(居住者:被相続人)
特定居住用宅地:宅地所有者と建物所有者が異なる場合(居住者:同一生計親族)

*A
誰が宅地を取得するかが問題となります。例えば、被相続人の生前は貸主が被相続人、宅地の借主が親族Aとなっており貸借関係が成立していたとしても、遺産分割で借主である親族Aが宅地を取得した場合には、貸主と借主が同一人物となってしまい貸借関係が消滅します。つまり、民法の混同が生じ貸借関係が消滅することになり貸付事業が継続できないため、貸付事業等宅地等の特例を受けることができないことになります。

遺産分割により混同が生じることにより賃貸借関係が消滅する場合

*B
被相続人の居住用・貸付・事業用の宅地のいずれにも該当しないため特例を適用できません。

*C
居住者が被相続人、建物所有者が同一生計で家賃が有償の場合は、被相続人の生前は同一生計の貸付事業用の宅地となります。しかし、被相続人が死亡したことで貸付事業が終了するため、申告期限まで貸付事業を継続するという要件を満たさないことになり、貸付事業等宅地等の特例を適用できません。

*D
別生計親族の貸付事業用の宅地は特例の対象外です。

*E
貸主=借主となる遺産分割結果は、申告期限までの貸付事業を継続するという要件を満たすことができないため特例を適用できません。産分割後に貸主=借主となると、生前に成立していた貸借関係が消滅する(民法が定める混同が生じる)ためです。

貸付事業用宅地等の場合

貸付事業用宅地等には宅地の上の建物を①被相続人以外の者が所有する場合(宅地を貸し付けている場合)と②被相続人が所有する場合(宅地と建物をセットで貸し付けている場合)があり、いずれの場合も地代又は家賃が有償であることが必要です。

貸付事業用宅地等の場合:宅地所有者と建物所有者が異なる場合(被相続人又は同一生計親族の場合)
貸付事業用宅地等の場合:宅地所有者と建物所有者が異なる場合(別生計又は第三者の場合)

*A
特定居住用宅地等と同じ

*B
特定居住用宅地等と同じ

*E
特定居住用宅地等と同じ

*F
被相続人又は同一生計親族の居住用・貸付用のどちらでもないため対象外です。

特定事業用宅地の場合

特定事業用宅地等には、宅地の上の建物の所有者は被相続人又は被相続人の親族(同一/別生計を問いません)のいずれかの場合に限られます(相措通69の4-2(2))。いずれの場合も、地代及び家賃は無償となっている必要があります。

特定事業用宅地等の場合:宅地所有者と建物所有者が異なる場合(事業主:被相続人の場合)
特定事業用宅地等の場合:宅地所有者と建物所有者が異なる場合(事業主:同一生計親族の場合)

*A
特定居住用宅地等と同じ

*B
特定居住用宅地等と同じ

*E
特定居住用宅地等と同じ

*D
特定居住用宅地等と同じ

特定同族会社事業用宅地等の場合

特定同族会社事業用宅地等には、宅地の上の建物を①被相続人が所有する場合(宅地と建物をセットで貸し付けている場合)と②被相続人以外の者が所有する場合(宅地を貸し付けている場合)の場合があります(措通69の4−23)。

特定同族会社事業用宅地等の場合:宅地所有者と建物所有者が異なる場合

*A
特定居住用宅地等と同じ

*B
特定居住用宅地等と同じ

*D
特定居住用宅地等と同じ

*F
貸付事業用宅地等と同じ

*G
小規模宅地等の特例を受けるためには、特定同族会社に宅地を近隣相場の地代を支払う賃貸契約になっている必要があります。賃貸借契約による宅地は、同族会社に借地権が生じるため権利金等を支払わなければ借地権の贈与があったものとして認定課税されてしまいます。この借地権に認定課税を避けるためには、相当の地代を支払うか、税務署に土地の無償返還に関する届出書を提出する必要があります。無償返還の届出書とは、土地の使用後に無償で返還する約束になっていることの意思表示の届けのことです。