相続人の範囲の間違い

間違いが生じやすいケース

非嫡出子(婚外子)の相続権

認知された婚外子は、実子と同等の相続分がある

認知とは、嫡出でない子(非嫡出子)と親との間で法律上の親子関係を発生させる手続きのことです。法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子を非嫡出子といいます。最近は、「婚外子」という呼び方が一般的です。

父親と母親との間に婚姻関係がない場合、その間に生まれた子と母親の間の親子関係は、分娩という客観的な事実により発生します。母親の場合には認知は必要ありません。

父親と非嫡出子の間の親子関係は、認知によってはじめて成立します。したがって、父親の場合は、父親から認知を受けた非嫡出子のみが父親の相続人となり、認知前には、その子に父親の相続権はありません。

認知の方法には、生前に行う認知と、遺言による認知があります。

死後認知があると

被相続人の生前に認知されていなくても、民法により被相続人の死後3年以内でれば、検察官を相手に認知の訴えを起こすことができます。これを死後認知といいます。

死後認知が認められると、子は生まれたときから被相続人の子であったとみなされ相続人となります。つまり、認知は出生の時に遡って効力を生じるのです。

ただし、認知が認められた時に既に遺産分割が済んでいる場合には、やり直しを求めることはできません。その代わりに、被認知者は他の相続人に対して、価額の支払いを求めることが認められています。

価額の支払いについて、相続税の計算では、代償分割の方法と同じように計算します。

離婚した元配偶者と子供(前妻の子)

元配偶者は血縁関係がないため、相続人にはなりません。子供は離婚によって血縁関係がなくなるわけではないので、父親と母親のどちらが引き取って養育したかに関わらず嫡出子として相続権があります。

配偶者の連れ子

連れ子は、被相続人と血縁関係がないため相続人にはなりません。たとえ生計を共にしていたとしても、戸籍上、連れ子はなんの繋がりがない他人として扱われるのです。

実子と同じ第1順位の相続人とするには、生前に被相続人と養子縁組をしておく必要があります。なお、養子縁組を行わなくても、遺言によって連れ子に財産を残すことができます。

事実上、離婚状態の配偶者

配偶者であるかどうかは、相続開始時の戸籍で決まります。したがって、相続の開始時点で別居状態や離婚協議中の場合でも、相続権があります。

同時死亡の相続人

相続人は、相続時に生存している必要があり(胎児を除く)、これを同時存在の原則といいます。このため、相続関係にある者が死亡し、そのどちらが先に死亡したか明らかでない場合には、どちらの相続人の判定においても既に死亡しているものと推定します。つまり、同時死亡の場合には、相互に相続しないということです。なお、この規定は「推定」であるため、死亡の先後が立証できれば、その推定は覆されます。

例えば、祖父と夫が交通事故に遭い亡くなり同時死亡の推定の適用がある場合には、祖父と夫の間の相続はないことになるため、祖父の遺産を、妻は相続できません。

ただし、祖父が即死、夫が病院に搬送された後に死亡が確認された場合には、この同時死亡の推定は適用できません。親子は同じ事故で亡くなったのですが、祖父が死亡した後に夫が生存していたことが明らかなためです。

また、夫と妻の間に子がいた場合には、子が夫の相続権を代襲相続するため、夫の相続分と同じ相続権を子がもつことになります。

同時存在の原則

全血兄弟姉妹と半血兄弟姉妹

複数の兄弟姉妹が相続人になる場合、兄弟姉妹間で相続分を均等割することが原則ですが、例外があります。

複数の兄弟姉妹がいる場合で、その中に被相続人と親の一方のみを同じとする兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)がいる場合には、その者は父母ともに同じ兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)の2分の1が法定相続分となります。

なお、半血兄弟姉妹がいる場合でも、親からの相続については、原則どおり、相続分は均等となります。

全血と半血兄弟の相続分

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