遺言執行者
遺言執行者を選任する
遺言者に代わって遺言書の内容を実現させる人が遺言執行者です。
遺言執行者は、相続財産の管理や遺言の執行に必要な行為をする権利と義務を持ち、相続人であっても遺言執行者の活動を妨げることはできません。
遺言執行者にしかできない事項に、相続人の認知や廃除、取り消しがあります。そのほか、動産の名義変更や預貯金の解約などは相続人でもできるので、選任は必須ではありません。
遺言執行者を選任する手続きには、次の3種類があります。
- 遺言者が遺言で指定する。
- 遺言者が遺言で第三者に遺言執行者の指定を委託し、第三者が指定する。
- 利害関係人が家庭裁判所に請求し、家庭裁判所が選任する。
遺言執行者は、複数でもよく、法人を選任することができます。ただし、未成年者及び破産者は執行者になることができません。
遺言執行者は、遺言で被相続人により指定されている場合があります。この場合は、指定されている人に引き受ける意思があるかを確認します。その人が辞退した場合や、遺言に指定がなかった場合は、家庭裁判所に遺言執行者の選任の申し立てをします。申し立てできるのは、相続人、債権者、遺贈を受けた人など利害関係者です。
未成年者と破産者を除いて、誰でも遺言執行者になることができます。
なお、遺言書に遺言執行者の記載がない場合には、相続人が遺言の内容に沿って相続手続きをおこないます。
遺言執行者の立場や権限
遺言執行者は相続人の代理人としてみなされ、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務があります。
遺言事項のうち、遺言執行者にしかできない事項、任せられる事項があります。
遺言執行者にしかできないこと
- 相続人の廃除と取り消しの申し立て
特定の相続人から相続権を奪う廃除、またはその取り消しがあった場合には、家庭裁判所に申し立てます。 - 子の認知
子の戸籍の届け出を行います、子が20歳以上であれば本人の承諾が必要です。
遺言執行者に任せられること
- 財産目録の作成
- 相続人の相続割合や分配を執行(登記の申請や債務の弁済など)
- 遺贈する財産の引き渡しや登記
- 財産の管理(財産の不法占拠者への明け渡しの請求や未納家賃の取り立て)
遺言執行の費用
遺言の執行に関する費用(例えば、相続財産の管理に関する費用、遺言執行者への報酬など)は、相続財産の負担となります。
ただし、相続税においては、債務控除の対象となるのは、被相続人の債務で相続開始の際に現存するものに限定されているので、遺言執行費用は相続税の計算上、債務控除の対象とはなりません。