遺留分侵害額請求権の行使と相手方保護

遺留分侵害額請求の行使

遺留分を侵害された者は、遺留分を侵害する遺贈又は贈与を受けた者に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。

意思表示による行使

遺留分侵害額請求権は形成権であるため、受遺者又は受贈者等に対する遺留分侵害額請求の意思表示によって金銭債権が成立します。

しかし、口頭による意思表示は、後々のトラブルのもとになりかねないので、通常、配達証明書付きの内容証明郵便によって相手方に意思表示します。

その際に、遺留分侵害額を具体的に示す必要はなく、遺留分を侵害された侵害額を請求するものであるという意思表示が示されている必要があります。

支払い期限について相当の期限を設けることができる場合がある

遺留分権利者が遺留分侵害額請求権の行使をすることで、受遺者に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。受遺者の意思に反する場合でも、また、受遺者に遺留分侵害額に相当する金銭債務を支払うための資金がない場合でも、一律に金銭債務が発生します。

このため、遺留分侵害額に相当する金銭債務の請求を受けた受遺者等が支払い資金を用意できない場合の救済策が設けられました。

この遺留分侵害請求による金銭債務を直ちに支払うことができない受遺者等は、その債務の全部又は一部の支払いについて相当の支払期限を設けることを家庭裁判所に請求することができます。ただし、裁判所が相当の支払期限を認める具体的な要件や判断基準は明示されていません。

裁判所が遺留分侵害額に相当する金銭債務の支払いにつき期限を許与した場合には、その期限が到来するまでの間に法定利息は発生しません。

譲渡所得税が課税される

受遺者が支払い資金を用意するために、相続財産を任意に売却した場合には、所得税法や租税特別措置法において新たな課税除外規定が新設されない限り、譲渡所得税及び住民税が課税されることになります。

当事者が合意すれば代物弁済も認められる

遺留分侵害額請求の当事者同士が、金銭の支払いに代えて現物の提供をすることで合意することは認められると考えられています。