相続人を確定するための情報収集
目次
公的書類にもとづき相続人を確定する
相続人の有無や範囲の確定は非常に重要な手続です。
遺言書がない相続の場合には、遺産分割協議により相続財産を分割しますが、相続人が1人でも欠けている遺産分割協議は無効となるからです。
相続人の中に、行方不明者や音信不通・生死不明者等がいる場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらう必要があります。
→詳しくは遺産分割協議を参照ください。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍
相続が開始したら、まず、相続人には誰がいるのかを確定する必要があります。法定相続人を漏れなく洗い出したことを証明するために、被相続人の出生から亡くなるまでの連続した戸籍謄本を収集します。
- 法定相続人を漏れなく洗い出したという証明をする(他に法定相続人はいないという証明)
- 各自が法定相続人であることを証明する
戸籍にはすべての履歴が記載されていない
戸籍は、結婚、転籍、法律による改製により作り替えられます。戸籍を作り替える際に、その時点で有効な情報だけが新しい戸籍に移し替えられるため、例えば、結婚して除籍になった子は、新しい戸籍には記載されないのです。このため、最新の戸籍謄本からは被相続人の子を漏れなく把握することができません。出生から死亡までの連続した戸籍をつなぎ合わせることで、初めて被相続人の子をもれなく把握することができるのです。
*1 被相続人の現在の戸籍とは、その人が死亡したことが記載されている戸籍を意味します。
*2 それまでの家単位の「戸主」を中心とした戸籍から、「夫婦その子ども」を単位とした戸籍への変更がおこなわれました。
*3 戸籍事務のコンピューター化により縦書きB4から横書きA4に変更されました。
相続人によって収集する戸籍の範囲が違う
相続人になる者(推定相続人)によって収集する戸籍の範囲が、次表のように異なります。
*1 父母や祖父母には代襲相続権がありません。(代襲相続について>>詳しくはコチラ)
戸籍が連続していることをどうやって確認するか
2つの戸籍謄本等がつながっていることは、「新しい戸籍謄本等が作成された日付」と、ひとつ前の戸籍謄本等の「最終的に有効であった日付」が一致しているかどうかで判断します。死亡時の戸籍から古い戸籍へと順々にたどっていき、被相続人が出生した日より前に作成された戸籍にたどり着けば、被相続人の出生した日から死亡した日までの連続したすべての戸籍が入手できたことになります。
相続関係図説明図を作成する
戸籍謄本等により判明した相続関係について、次のような相続関係図としてとりまとめます。この相続関係図は、相続税の申告、不動産登記や金融機関での相続手続等の際に使用します。
法定相続情報証明制度
法定相続情報証明制度とは、相続人が提出した法定相続情報一覧図(被相続人と相続人の身分関係を一覧にした図)を法務局が戸籍等で問題ないか確認し、その法定相続情報一覧図が相続関係を正しく表していると法務局が証明する制度です。
相続税の申告、不動産の相続登記手続、金融機関への口座照会、遺言の検認や調停の申立てをする際には、相続関係を確認するために戸籍(除籍)謄本の原本の提出が求められますが、この戸籍等の束の代わりに「法定相続情報一覧図の写し」を使用することができます。この一覧図は法務局に5年間保管され、その間その写しは何度でも交付してもらうことができます。
メリット
相続税の申告や金融機関及び法務局における相続手続の添付書類として利用できます。この手続をする際に、一覧図を用いること次のメリットを得ることができます。
- 戸籍及び法定相続一覧図の内容を登記官に確認してもらえる
→ 相続手続をおこなう時に収集した資料に漏れが判明し、あたふたする事態を避けられる - 相続手続において戸籍謄本の束を何度も提出する必要がなくなる
→ 各手続に要する時間が短縮される。手続をおこなう金融機関等の数が多いと効果絶大です。
→ 大事な書類を紛失するリスクを低減できる
各種相続手続の添付資料として利用できる
法定相続情報一覧図を戸籍(除籍)謄本の束の代わりに添付資料として利用できる手続には次のものがあります。
- 相続税の申告
- 不動産の相続登記手続
- 金融機関等における相続手続
- 遺言書の検認や調停の申立て手続
法定相続情報一覧図に戸籍に記載されている続柄を記載することで相続税の申告書の添付書類として使用できます。また、相続登記の際に、法定相続一覧図に住所地を記載することで、相続人の住民票の写しは不要となります。
一覧図の作り方
法定相続情報一覧図は、必要書類の収集、法定相続情報一覧図の作成、申出書の記入、登記所へ申出という手続の流れになります。
詳しくは・・>法務局のホームページ
法定相続情報一覧図の写しの交付の手続のために用意する資料の一覧は次表の通りです。法務局への申出の手続後、その写しが発行できるまで1〜2週間かかります。
- 法務局に申出した時に「原本還付」の手続をすると、戸籍謄本等の原本は返却されます。ただし、申出人の身分確認の資料は返却されません。このため、この身分確認書類に住民票を利用する場合には、他の相続人よりも1部多めにに収集しておく必要があります。
- 一覧図に相続人の住所の記載は任意となっています。相続税の申告では相続人の住所の記載は必須ではありません。弊事務所では記載しています。相続登記の際に、法定相続一覧図に住所地を記載することで、相続人の住民票の写しは不要となります
法定相続情報一覧図の雛形、記入例:・・>法務局のホームページ
委任状の記入方法:・・>>法務局のホームページ
申出人:相続人の代表となって手続を進める人
申出人の本人確認書類:
(住民票の写し、運転免許証、マイナンバーカード表面のコピーなど)。申出人の住民票の写しを利用するケースが多いと思います(コピーを使う場合には、原本に相違ない旨を記載し署名捺印する必要があります)。この確認書類は法務局から返却されないので申出人の住民票は1部多めに入手しておくと良いでしょう。
委任者となれる人:
相続人から委任を受けた親族、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士及び行政書士
法定相続情報一覧図の限界
法定相続情報一覧図は、戸籍にもとづいて作成されるため、法定相続人のみが記載されます。このため、次の状況は反映されないことになり、実際の相続人等と不一致が生じます。
- 子が認知された場合
- 総則開始時に胎児であった者が生まれた場合
- 相続人の廃除、相続放棄があった場合