遺贈義務者の引渡義務等

債権法の改正と平仄を合わせ遺贈も改正された

遺贈義務者の引渡義務

民法(債権法)の改正によって

  • 売買等の担保責任について、いわゆる法定責任説が否定され、買主等は、目的物が特定物であるかどうかを問わず、その種類及び品質等に関して契約内容に適合する物を引き渡す義務を負い、引き渡した物が契約内容に適合しない場合には、売主等に対して、追完請求等をすることができるとされた
  • 無償行為である贈与についても、贈与者は契約内容に適合する目的物を引き渡す義務を負うことを前提としつつ、その契約において、贈与の目的物として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する

とされました。この債権法の改正と平仄を合わせる形で、遺贈についても遺贈義務者が追完義務を負うことになりました。

遺贈義務者は追完義務を負う

遺贈義務者は、遺贈の目的物である物又は権利を、相続開始の時(その後に当該物又は権利について遺贈の目的として特定した場合には、その特定した時)の状態で引き渡し又は移転する義務を負うことになりました。

このため、相続開始時等の状態から劣化又は損傷等が生じた場合には、遺贈義務者は受遺者に対して、追完義務を負うことになります。

参考:追完請求権とは

追完請求権とは、引き渡された売買の目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に、買主が売主に対して、目的物の補修、代替物の引渡し又は不足分の引渡しを請求することです。「追完」とは、法的に効力が未確定な行為についてあとから行為を有効にすることです。

追完請求をするためには、原則として、不適合を知った時から1年以内に不適合である旨を通知します。また、売主は、この請求に対して、買主に不相当な負担を課さない範囲で請求とは異なる方法で義務履行を追完することができます。