共有分割する際の留意点

もめごとを先送りするだけの分割方法

共有分割は、各相続人の持分を決めて共有で分割する方法です。不動産などを公平に相続分に応じて分割することができますが、将来的に相続人が死亡した際には、さらに共有者が増える等、将来にトラブルが生じる可能性があることから、もめごとを先送りするだけの分割方法といえます。

<ポイント>

共有がもたらすリスクを踏まえて検討する

  • 共有者は、自己の共有持分を自由に処分できる
    (ただし、共有物そのもの処分は共有者全員の合意が必要)
    → 他の共有者の合意なく第三者に売却することが可能
    → その結果、第三者との共有状態となる
    → 共有物の使用権や使用料の負担が問題となる
  • 共有者は、共有状態を解消を求めることができる(共有物分割請求)
    → 共有者は、他の共有者に対して共有状態の解消を求めることができる
    → 請求を受け、協議の結果、他の共有者に金銭を支払うことになる

共有の法的性質

共有分割が行われた場合には、民法の共有に関する規定が適用されます。

共有とはひとつの物を複数人でそれぞれ持分を決めて共同で所有することをいます(民法249)。

なお、相続開始から遺産分割が成立するまで相続財産は法定相続人間で共有状態になりますが、この共有は、民法249条の共有とは次の点で法律的な性質が異なっています。

  • 共有物分割請求権が認められない
  • 遺産分割には遡及効がある

共有物の管理・変更行為には制約が生じる

各共有者は、その持分に応じて共有物を使用することができます。ただし、物全体についての行為については他の共有者の合意がないとできません(民法251、252)。

  • 共有物の変更行為(共有物の増改築や売却等)には共有者全員の合意がないとできない
  • 共有物の管理行為(賃貸借する等)には共有者の持分価格の過半数の合意が必要となる
  • 共有物の保存行為(修繕、修理等)は、各共有者が単独でおこなうことができる

持分の処分や共有物の分割請求ができる

各共有者は、原則として、自己の持分を処分する(譲渡や担保に入れる)ことや他の共有者に対して分割請求することが認められています(民法256①)。

つまり、共有物は、複数の共有者が権利を持っていることから、所有者としての権利が制約されるため、各共有者にはいつでも共有状態を解消する権利が認められているのです。

どのように分割するかは共有者全員の協議で決めますが、その協議がまとまらないときは裁判所に分割請求することができます。共有物分割の方法には、①現物分割(例えば、分筆)、②競売分割、③金銭を支払いひとりの所有にする3つの方法があります。協議の結果、結局、競売となりその代金を分割することになる場合や競売等を避けるために他の共有者に対して金銭を支払うことになります。

【利用・処分等に制限がある共有】

共有 利用・処分に制限が生じる

相続財産の共有には3つのリスクがある

共有分割は、各相続人の持分を決めて共有で分割所有する方法です。この分割方法によると不動産などを公平に相続分に応じて分割することができますが、共有持分に対する法的な制約や共有者が共有関係を解消する権利が認められていることから、次の3つのリスクを抱えた分割方法となります。

  • 共有物が有効活用できないリスク
    → 共有者の合意がないと売却、増改築等ができない
  • 利害関係が複雑になるリスク
    → 共有者が亡くなるとその相続人が新たな共有者になる
  • 金銭で買い取ることになるリスク
    → 分割請求された場合に共有物を手放したくない場合には、他の共有者に対して金銭を支払うことになる

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