相続欠格と廃除
概要
本来相続人となるはずの者でも、相続人になれないことがあります。相続欠格と相続人の廃除があった場合です。
【相続欠格と廃除】
相続欠格 | 相続の廃除 | |
---|---|---|
意義 | 欠格事由がある場合に、法律上当然に相続人としての地位を失う(手続は必要なし) | 生前又は遺言による被相続人の意思により相続人としての地位が剥奪される |
事由 | <生命侵害> 被相続人や相続人の殺害等<遺言侵害>遺言書の偽造、破棄または隠匿 | 被相続人に対する虐待、重大な侮辱著しい非行 |
手続 | 法的手続き不要 | 家庭裁判所に申し立て |
遺贈 | 遺贈することもできない | 遺贈することはできる |
取消し | 取り消しできない | 取り消しできる |
代襲相続権 | 代襲相続できる | |
みなし財産 | 受け取っている場合は、相続税が課される | |
贈与の持戻し | 持戻し対象外 | 持戻しの対象 |
戸籍上の記載 | なし | あり |
- 廃除の対象となる者は、遺留分を持つ推定相続人、つまり、配偶者や子(代襲相続を含む)及び直系尊属に限定されおり、兄弟姉妹は廃除の対象となりません。
- 失格及び廃除により相続権を失った者には、遺留分はありません。ただし、失格及び廃除による代襲相続人は遺留分をもちます(民法1042②、901①、887②③)。
- 欠格及び廃除は、その者の子の相続権までを剥奪しません。このため、欠格者又は廃除者に子がいる場合には、その子が代襲相続できます(民法889②)。
- みなし相続財産(例えば、被相続人の死亡保険金等は、相続財産ではないため、欠格・廃除により相続権を失った者でも受け取ることができます)を取得している場合は、相続等によって取得したものとして相続税の対象となります。
- 相続開始前3年以内の暦年贈与の相続財産への加算について、廃除によって相続権を失った者であっても遺贈により財産を取得していれば加算対象となります。(欠格者に対して遺贈はできません。)
相続税の計算に与える影響
代襲相続人をカウント
相続人が欠格や廃除によって相続権を剥奪された場合、その直系卑属である子や孫が代襲相続します。
相続税の基礎控除額の算定上、その相続欠格や廃除により相続権を失った相続人は、法定相続人の数から除外しますが、代襲相続人がいる場合には、その代襲相続人を法定相続人の数に含めます。
例えば、欠格がなければ法定相続人は1人であっても、欠格者に子が2名いる場合は、欠格により法定相続人は2人になります。
欠格は相続開始前3年以内の持戻しの対象外
相続または遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けている場合は、その贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に含めます。これを持戻しといいます。
相続欠格により相続権を失った者は、相続又は遺贈により財産を取得した者に該当しないため、この持戻しの対象外です。
これに対し、廃除によって相続権を失った者であっても、遺贈により財産を取得していれば、この持戻しの対象となります。
みなし相続財産は相続税の課税対象となる
欠格や廃除によって相続権を失った者であっても、みなし相続財産を取得している場合には、相続税の対象となります。相続税を計算する上で相続または遺贈によって取得したものとみなします。