寄与分とは

寄与分の意義

寄与分とは、相続人の中に、被相続人の生前における財産の維持や増加、あるいは被相続人の療養看護などに通常期待される程度を超える特別な貢献をしたもの者がいる場合、遺産分割の際に、その相続人に寄与の程度等に応じて相続分以上の財産を取得させようとする制度です。被相続人の財産形成に特に寄与のあった相続人とそうでない相続人とを形式的に法定の相続分通りに遺産を分けるのは不公平なため、この不公平を是正しようとするのが、寄与分の考え方です。

相続人にのみ寄与分が認められる

寄与分は相続人のみに認められます。

このため、長男の嫁、被相続人の内縁の妻といった相続人以外の者は寄与分を主張することができません。なお、代襲相続人は、被代襲者の寄与行為に基づく寄与分を主張することができます。

扶養義務の範囲を超える貢献が必要

ハードルが高い特別な寄与の要件

被相続人の財産の維持・増加につき特別の寄与があることが要件です。

寄与分が認められるには特別の寄与が必要なため、民法で当然の義務として定めている、

  • 夫婦間の協力扶助義務
  • 親族間の相互扶助義務
  • 扶養義務

といった、被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待されるような範囲を超える貢献でないと寄与分が認められません。

特別な寄与に該当する療養看護のレベル

被相続人の療養看護の場合、「妻や子が、被相続人の入院中に心を尽くして世話をした」という程度では、扶養義務の範囲内とみなされ寄与分とは認められません。被相続人の療養看護として寄与分が認められるのは、民法上の扶養義務の範囲および程度を超えた療養看護である場合に限られます。

療養看護が、特別な寄与に該当するかどうかの判断は、「相続人がどのような看護をおこなったか」ということのみならず、「被相続人がどのような病状にあり、どのような看護を必要としていたか」をあわせ総合的に検討し判断します。

たとえば、介護保険における「要介護度2」以上の状態にあった場合には、特別な寄与に相当するほどの介護が必要だったと認められる場合があります。

要介護度2とは、歩行や起き上がりなど起居移動が一人でできないことが多く、食事・着替えはなんとか自分でできるが、排泄は一部手助けが必要な身体の状態をいいます。

特別な寄与分を判断する具体的な基準は、次の表のとおりです。

【寄与分を判断する具体的な基準】

寄与分の例示内容
被相続人の事業に対する労務の提供農業や自営業を夫婦や親子が協力して営んでいる場合で、無報酬で被相続人の事業に従事していた。
【要件】
・無償性・・・世間並みの報酬を得ていないこと
・継続性・・・労務の提供が一定期間継続していること(3〜4年程度)
・専従性・・・かなりの負担を要していた(専従を意味するものではない)
被相続人の事業に対する金銭等の給付その貸付によって倒産をのがれることができ事業が発展した場合。
【要件】
・無償性・・・無償に近い条件の給付であること
・継続性・・・要件ではない
・専従性・・・要件ではない
被相続人の療養看護民法上の扶養義務の範囲と程度を超えた療養看護をしていた場合。
ただし、配偶者による療養看護は、夫婦間の協力扶助の履行であり特別な寄与に該当しない。
被相続人の療養看護をすることで、医療費や看護費用の支出を避けることができ相続財産の維持に貢献したこと。
【要件】
・無償性・・・無報酬又はこれに近いこと
・継続性・・・相当期間に及んでいること(1年以上)
・専従性・・・かなりの負担をしていた(専従を意味するものではない)

算定式

特別受益や寄与分は、相続開始時を基準に評価します。受贈時の評価額ではありません。

最初に相続開始時点の相続財産に寄与分を減算した「みなし相続財産」を算定し、次のように特別受益者およびそれ以外の相続人の相続分を計算します。

みなし相続財産         = 相続財産 − 寄与分

寄与者の相続分         = みなし相続財産 × 法定相続分+ 寄与分

寄与者以外の相続分   = みなし相続財産 × 法定相続分

相続開始日が評価基準日

寄与分は、相続開始日が評価時点となっています。したがって、相続開始までの期間における寄与分が対象であり、相続開始後の貢献については寄与分の評価対象にはなりません。

寄与分は遺留分に優先する

特定の相続人に寄与分があった場合に、他の相続人の遺留分を侵害するような寄与分の額が認められるかが問題となります。

民法上、寄与分と遺留分の関係については規定が設けられていないことから、寄与分には上限がないという考え方があります。同様に、寄与分は遺留分に優先することから、遺留分の額に食い込むような寄与分が認められるという考え方があります。

なお、遺留分減殺請求の対象となるのは、遺贈と贈与に限定されていることから、寄与を取得した者に対して、寄与部分について遺留分減殺請求を請求することは認められません。

相続人間の協議で寄与分を決める

まず、相続人間で遺産分割協議をおこない、合意形成ができない等の場合に、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てします。

特別寄与者

被相続人に対して、無償で療養看護その他の労務の提供をしていたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした相続人以外の親族について、相続の開始後に、相続人に対して寄与に応じた金銭の支払いを請求することができる制度が設けられました。

詳細は→・・・

 

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