相続分

概要

相続財産全体に対する各相続人の持分を、相続分といいます。つまり、各相続人の取り分のことで、被相続人が遺言で指定した指定相続分と民法が定めている法定相続分があります。

相続分内容
指定相続分被相続人が遺言で指定した、各相続人が相続できる割合
法定相続分より優先する
法定相続分民法が定めている、各相続人が相続できる割合

ただし、法定相続分どおりの遺産分割を強制されるわけではありません。遺言がない場合には、法定相続分を目安に相続人全員による「遺産分割協議」をおこない、相続人の全員合意によって各相続人の相続分を自由に決めることができます。

指定相続分

指定相続分とは、被相続人が遺言により定めた(又はこれを定めることを第三者に委託することができます)相続人の相続分のことです。

自分の財産をどのように処分するかは本人の自由というのが民法の大原則です。相続に関しても被相続人の意思が最優先されるため、この遺言による指定相続分は法定相続分に優先します。

指定相続分の指定方法

相続分の指定には、①割合的指定と②特定財産の指定があります。

割合的指定

相続分の割合的指定は、例えば、「財産の2分の1を妻に、2分の1は長男に相続させる」のように遺言で指定したものです。

特定資産の指定

特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」遺言をおこなった場合が、特定資産の指定になります。(特定の相続人に特定の財産を取得させるべきことを指示する遺産分割方法を定めたものであり、被相続人の死亡により直ちに被相続人の遺産は相続人に承継され、分割の協議又は審判等の手続きは必要ありません。)

遺留分を侵害しない指定が望ましい

各相続人には民法が保障している最低限の相続分である遺留分があります。遺留分を侵害する相続分の指定が行われると、遺留分を侵害された相続人は遺留分の減殺請求ができます。なお、遺留分を侵害した相続分の指定が、直ちに無効となるわけではありません。

一部の相続人に指定する場合

複数の相続人がいる時に、相続人の全員について相続分を指定する場合と一部の相続人のみに相続分を指定する場合があります。

相続人の全員について指定している場合には、その指定されたとおりの相続分になりますが、一部の相続人についてのみ指定している場合には、他の相続人は、残りの財産について遺産分割協議により実際の相続分を決める必要があります。

法定相続分

遺言がない場合には、相続人の全員の合意によって各相続人の相続分を決める必要があります。民法では一つの分け方の目安として、法定相続分という割合を定めています。法定相続分どおりの遺産分割を強制されるわけではありません。相続人が全員合意すれば、各相続人の相続分を自由に決めることができます。

具体的な法定相続分

法定相続分は、相続人のメンバー構成によって異なります。まず配偶者と血族相続人の組み合わせで大枠が決まり、血族相続人が複数いる場合には、その相続分を頭数で均等割します。

【相続人の構成と法定相続分】

 

(注)血族相続人がいる場合には、頭数で均等割するのが原則ですが、例外があります。異母・異父兄弟(半血兄弟)の相続分は、頭数で均等割りではなく同父母兄弟(全血兄弟)の2分の1になります。

代襲相続人の相続分

代襲相続人は、被代襲者であるもともと相続人になるべきであった者の相続分をそのまま受け継ぎます。同じ被代襲者について、複数の代襲相続人がいる場合には、それぞれの相続分は被代襲者の相続分を頭割りします。

 

養子の代襲相続の相続分

養子は法律上実子とみなすため、実子と同じ法定相続分となります。養子には、普通養子と特別養子があります。普通養子は、実親と養親の双方の相続権がありますが、特別養子は実親との血族関係を断つため、実親に対する相続権はありません。被相続人が孫を養子にした場合には、養子となった孫は、子としての相続分と代襲相続人としての相続分を合わせて取得します。