自筆証書遺言の方式緩和

改正の背景:自筆証書遺言の利用を促進する

改正前民法では、自筆証書遺言について、遺言者が、遺言の全文、日付及び氏名を自筆で書き、これに印を押すことが求められています。民法が定める厳格な作成方式に準拠していない遺言は無効となります。

この自筆要件は、かなりの労力を伴うことから、自筆証書遺言の利用を妨げる原因のひとつと指摘されていました。

自筆証書遺言の方式緩和

自筆証書遺言の利用を促進するため、作成方式が緩和されました。

自筆証書遺言書に相続財産の全部または一部の目録を添付する場合には、その財産目録(自筆遺言書中の相続財産の特定に必要な事項を記載する部分)については、自書を求めないことになり、パソコン等による作成はもとより、遺言者以外の者による代筆、不動産登記事項証明書、預貯金通帳の写し等を添付する方法でもよいことになりました。ただし、遺言者は自書によらない部分の目録の各頁(両面の場合には両面)に署名と押印をしなければなりません。

【自筆証書遺言に関する民法改正】

改正前改正後
遺言書遺言自書自書
財産目録自書自書以外に
各頁に署名と押印することを条件に、PCで作成、代筆、通帳の写し、登記事項証明書等の添付等も可

自筆証書遺言の方式緩和

財産目録は自書以外も可

自筆証書遺言に相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合、この目録については自書ではなく、パソコン等を利用して印字する方法や、代筆、不動産の登記事項証明書、預貯金通帳の写し等を添付することで財産目録とすることができます。

各頁に署名と押印が必要

ただし、自書によらない場合には、偽造や変造されるリスクを低減するために財産目録の全てのページ(両面に目録がある場合には両面)に署名し、押印する必要があります。

印鑑の実印と同一性は問わない

押印する印鑑は、印鑑登録証明がある実印である必要はありません。これは、遺言書に押印する印鑑の要件と同じです。

また、遺言書本文と財産目録の一体性を確保する観点から、契印や同一の印による押印も求められていません。

加除訂正の方式の緩和

遺言書及び自書した財産目録の場合

遺言書や自書によらない財産目録に加筆や削除等の訂正をする場合には、①遺言者が変更の場所を指示し、②これを変更した旨を付記してこれに署名し、かつ、③変更の場所に押印しなければ変更の効力が生じません。

  •  ×印又は取り消し線を引くなどして、加除訂正を行う部分を特定する
  • 上記加除訂正した部分に押印する
  • 欄外に、「○行目 ○文字削除 ○文字加入」等、加除訂正したことを付記する
  • 上記、加除訂正を付記した部分に署名する

自筆以外の財産目録の場合

自筆証書遺言に別紙として添付していた財産目録を削除し、修正した新しい財産目録を添付する方法で加除訂正をする場合には、次の方法でも加除訂正の効力が認められます。

  • 旧財産目録を新財産目録に訂正する旨の文言が自書されていること、かつ、
  • 新財産目録の全ての頁に遺言者の署名捺印があること

施行日

2019年1月13日から施行されます。

なお、2019年1月13日以前に作成された自筆証書遺言については、従前の例によります。