特定財産承継遺言(=相続させる遺言)

相続させる遺言の効果

「特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨」や「すべての遺産を特定の相続人に相続させる旨」の遺言(いわゆる、相続させる遺言です。改正民法では「特定財産承継遺言」として定めています。)は、遺言者の特段の意思表示がなければ遺贈ではなく、特定の相続人に特定の財産を取得させるべきことを指示する遺産分割方法の指定として取り扱います。

特定の財産を特定の相続人に相続させる旨の遺言は、遺産分割方法の指定をしたものとするため、

  • 遺産分割協議を経ないで、指定された相続人がその財産を取得する
  • 指定された相続人が単独で相続登記ができる

となります。

遺贈する旨の遺言と相続させる旨の遺言の相違点

特定の財産を特定の相続人に遺贈する旨の遺言と相続させる旨の遺言の相違点は、次の表のとおりです。

遺贈する旨相続させる旨
遺産分割協議必要不必要
登記単独で登記できない
(遺言執行人がいない場合は、他の相続人全員の協力「共同申請」が必須)
単独で登記できる
登録免許税相続人への遺贈:0.4%
相続人以外:2%
0.4%
代襲相続制度ありなし
農地の場合の農地法3条の許可必要不必要

なお、遺産分割方法の指定が、特定の財産を特定の相続人に処分させることを定めるものではなく、分割の方針(たとえば、○○は△△に委ねるなど)や手段(たとえば、財産は全て△△が取得し、□□は、代償金を支払うなど)を定めている場合は、別途、遺産分割協議を行う必要があります。

指定された受遺者が先に死亡した場合

相続させる遺言で、特定の財産を受け取るとされた受遺者が、被相続人よりも先に死亡した場合には、遺贈は無効となります。

代襲遺贈のようなことも生じません。

遺贈が無効になることを避けるには、あらかじめ、「その受遺者が先に死亡していた場合には、その受遺者の子に遺贈する旨の意思表示」を遺言書に記載しておく必要があります。このような遺贈方法を、補充遺贈といいます。