低額譲渡の場合の課税関係

はじめに

低額譲渡とは、資産の価額(時価)に比べて著しく低い価額で譲渡することをいいます。

著しく低い価額により譲渡がおこなわれると、当事者間で決めた譲渡価額ではなく通常の取引で成立するであろう時価をベースにしてみなし贈与やみなし譲渡があったものとして課税がおこなわれます。次の4つのケースにおいて、著しく低い価額で取引がおこなわれた場合の課税関係について解説します。

  1. 個人→個人
  2. 個人→法人
  3. 法人→個人
  4. 法人→法人

参考:税法における取引主体と時価の考え方>>詳しくはコチラ

【まとめ】

低額譲渡の課税関係

著しく低い価額とは

「著しく低い価額」とはどの程度のことをいうのでしょうか。

著しく低い価額かどうかは、時価と比較して判断します。その判断基準が、譲渡が個人間(贈与税が適用される)の場合と、個人と法人間(所得税が適用される)場合とで異なります。

贈与税と所得税における低額譲渡の判断基準
主体と低額譲渡に対する課税の考え方
取引価格が時価と乖離している場合に適用する税法の種類

個人から個人への低額譲渡の場合

<設例>取得費1,000、時価5,000の財産を著しく低い価額である譲渡価額2,000で譲渡した。

低額譲渡の課税関係:個人→個人の場合

譲渡価額が「時価よりも著しく低い場合」には譲渡価額と時価の差額が「みなし贈与」として贈与税の課税対象となります(相法7)。

  • この場合の時価とは相続税評価額ではなく通常の取引価額です。
  • 当事者に贈与の意思や租税負担回避の意図があるかどうかを問いません。
  • 親族間、第三者間の譲渡のどちらも対象です。

譲渡価額が「著しく低い価額」に該当するかどうかの基準について、贈与税には明文規定がないため個々の取引の事情等を総合的に勘案し判断します。過去、贈与税にも所得税法の基準「時価の2分の1未満(所法59①二、所令169)」と同じ数値基準が相続税にもありましたが、この数値基準を悪用するケースがあったため削除されたという経緯があります。

なお、相続税評価額による売買は、原則として著しく低い価額とはいえないとした判示があります。実務では、贈与税の課税可否を判断することになるため、相続税評価額を参考にする場合が多いようです。

低額譲渡の課税関係:個人→個人の場合 図解

個人から法人への低額譲渡の場合

<設例>取得費1,000、時価5,000の財産を著しく低い価額である譲渡価額2,000で譲渡した。

低額譲渡の課税関係:個人→法人の場合

売主の個人

低額譲渡に該当すると時価で譲渡したとみなされ譲渡所得税が課されます(所法59①二、所令169)。つまり、実際の譲渡価額を時価に引き上げて譲渡所得税が課税されるのです。

所得税法における低額譲渡とは、次の2つの要件を満たす譲渡のことです。

  • 個人→法人の譲渡、かつ、
  • 譲渡価額が時価の2分の1未満

ただし、時価の2分の1以上の譲渡価額の場合であっても、その譲渡が「同族会社等の行為又は計算の否認」の規定に該当する場合には、同様に、譲渡所得税が課されます(所基通59−3)。

この場合の時価は、相続税法上の時価ではなく所得税法上の時価(つまり、通常の取引の価格が時価)を適用します。例えば、土地の譲渡取引である場合には、路線価等を用いた評価額ではなく通常の取引を行う際の価格が時価となります。

ただし、非上場株式は一般的な取引市場がないため、通常の取引価額の算定をすることは非常に困難なことから相続税評価額(つまり、財産評価基本通達を準用した価額)を時価と判断することが多いようです。

買主の法人

法人は、常に時価取引を前提とするため、時価と譲渡価額の差額が受贈益として課税されます(法法22)。買主の法人が同族会社の場合で、低額譲渡によりその法人の株式の価額が増加した場合には、その増加した部分について財産を譲渡した者から贈与を受けたものとして株主に贈与税(個人の譲渡者からの利益供与とみなされる場合)または所得税等(法人の譲渡者からの利益供与とみなされる場合)が課税されます(相法9、相基通9-2)。この場合の「著しく低い価額」に該当するかどうかを判断する明文規定が贈与税にはないため個別に判断することになります。

低額譲渡の課税関係:個人→法人の場合 図解

法人から個人への低額譲渡の場合

<設例>取得費1,000、時価5,000の財産を著しく低い価額である譲渡価額2,000で譲渡した。

低額譲渡の課税関係:法人→個人の場合
会計仕訳

売主の法人

法人はいくらで資産を譲渡したとしても時価で譲渡したとみなされ法人税が課税されます(法法22)。

時価と譲渡価額の差額は、買主の個人と法人の間に雇用関係等があるかどうかによって課税関係が異なります。雇用関係等がない場合には、売主に対する寄付金として寄付金の損金不算入の対象となります(法法37)。買主の個人が法人の従業員・役員である場合には、給与や役員賞与となります(法法34)。

このため、過大な使用人給与の損金不算入の規定や役員給与の損金不算入の規定の対象となるがどうか注意する必要があります。これらの規定の対象となる場合には、その全額が損金不算入となります。

買主の個人

時価と譲渡価額との差額について所得税が課税されます。

法人と個人の間に雇用関係等があるかどうかによって、この所得税の内容が異なります。雇用関係等がない場合には一時所得として、雇用関係がある場合には給与所得となります(所法34、28)。

低額譲渡の課税関係:法人→個人の場合 図解

法人から法人への低額譲渡の場合

<設例>取得費1,000、時価5,000の財産を著しく低い価額である譲渡価額2,000で譲渡した。

低額譲渡の課税関係:法人→法人の場合

売主の法人

法人から個人への場合と同じ。

買主の法人

時価と譲渡価額の差額について、売主から贈与を受けたものとして、買主に法人税が課税されます(法法22②)。なお、取得価額は、時価となります。

買主の法人が同族会社であるため、低額譲渡により買主の株式の価額が増加した場合には、その増加した部分について、買主の株主に対して贈与税(売主の株主からの利益供与とみなされる場合)または所得税等(売主の法人からの利益供与とみなされる場合)が課税されます。

二重課税となる

法人の譲渡収入はその時価に基づき算出し、時価と実際の譲渡価額との差額が寄附金又は役員給与として認定します。寄附金については、寄附金の損金不算入(法法37)の規定により資本金や所得をベースにして算出するその法人の限度額を超える部分は損金として認められません。

一方、贈与等により利益を受けた側の法人でも、受贈益として益金算入する(法法22②)ため、贈与をした側と贈与を受けた側の双方について二重課税関係が生じることになります。

ただし、完全支配関係にある親子会社その他グループ内法人相互間で行われた場合には、贈与等をした法人には寄附金の損金不算入の適用をしますが、贈与を受けた側の法人には、その受贈益を課税対象となる益金に算入しない(非課税とする)ことになっています(法法25の2①)。

低額譲渡の課税関係:法人→法人の場合 図解

グループ法人税制

完全支配関係にあるグループ会社間について譲渡損益等を繰り延べるグループ法人税制があります>>詳しくはコチラ